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私たちが考えるお米のこと 第3回

当社のこだわり  シニア会 永嶋 幸男

 今年も収穫の時期を迎えましたが、思うように新米への切り替えが進まず、得意先への商品継続と今後の対応に忙しい日々を過ごしています。
 当社は埼玉県東部に位置し、慶長年間創業以来約400年に亘り現在の本社所在地において米穀商を営み、私で19代を数える伝統ある店です。
 当社のこだわりとは、創業以来の伝統である「信用と堅実な商い」という基本を大切に、時代にしなやかに適応する良識ある企業として継続する事です。
古い伝統の中に常に新しいものを取り入れながらも、地に足の着いた堅実な「商い」を継続することです。
 父の代で精米の取り扱いを開始し、徐々にそのウエイトを高めながら、現在は、小さいながらもメーカーを目指しています。
 1990年に現在の地に工場と倉庫を移設して以来、食味計をはじめとした検査機器を導入し、品質管理に重点を置きながら工場の充実を図ってきました。無洗米にも早い時期から取り組み、スーパージフは約6年、テイスティホワイトは稼動してから1年半が経過しました。
 より良い製品作りの為の日々の努力と、パレットごとの管理をベースとした、当社独自の社内におけるトレーサビリティのシステムを実践し、製品から入荷までは容易にたどる事が可能となっています。
 従来からの日常業務をマニュアル化して、(社)日本精米工業会の精米工場品質システムの認定を受け、日々実践しています。また現在は(株)アファス認証センターの有機認定を申請中です。
 特別栽培米については6年前より数百トン規模で取り組んでいますが、本年は有機米にもチャレンジしたいと思っています。
 小さくとも存在感のある、必要とされる企業であり続けたいと願っています。
シニア会 永嶋 幸男
ここで、買う側から眺めてみましょう。
米の消費が年々落ちてきた原因の一つに「炊くのに時間がかかる」ということが挙げられると思います。それでも、日本の家庭は諸外国に比べて家庭で料理することは多いほうだそうです。米を研ぐ(洗う)浸漬する、炊飯、むらしまで一時間以上掛かってしまうからです。無洗米は洗う手間が省けることが「売り」ですが、業務用では水の使用やスペースの問題、あるいは作業の合理化という観点もありますね。
これは、これで良いのですが、心配していることがあります。
皆さんご承知のことだと思いますが、無洗米にするには、通常精米も重要なポイントになります。
それは、精米が甘いと無洗化処理の機械にかけても、ヌカ成分が残っていて、無洗米にはなりにくいからです。濁度を下げるためには、精米をきつくする、いわゆる過搗精の状態にしてあげなければならないからです。
米の食味は大変微妙なところで、おいしい、おいしくないと判断します。
無洗米の食味というのは、その微妙なヌカ成分のおいしさが無くなってしまうのです。
味のない、まっ白なご飯がおいしいご飯というように嗜好が変化してゆく可能性も大ですね。
日本米の良さを剥いでしまう感じを筆者は持っています。
これも時代の流れですから、量販店や一部の業務用での流通は増えてゆくと予測できます・・・。
一方でシェアは少なくなったとはいえ、米専門店では米屋として、本当においしい米を販売してもらいたいものです。
それには、精米工程も重要な役割があります。
通常の玄米を白米にするには、精米歩留九十が一つの目安ですが、筆者は現在の白米は搗き過ぎではないかと危惧しています。
今では循環式の精米機はほとんど姿を消してしまいました。
三十年近く前になりますが、筆者はモーリーMG7という循環式の精米機を使っていたことがあります。五十馬力のモーターで循環させるのですから迫力あります。分銅の掛け方やヌカを切るタイミングなど、熟練工の世界でありました。ヌカと一緒に少しずつ精米して行きますので、精米の工程が手にとるように解ります。
又、生産地でもコイン精米機大繁盛ですが、こだわる農家は昔ながらの循環式の精米機を好んで使っています。
白米の見た目が黄色い(飴色)ことや白度計の数値が上がらないということ。あるいは最後のヌカ切れが悪いために米糠が酸化し、日数が経つと食味が落ちるということがあったと思われます。
米専門店は精米にもう一度こだわる必要があるのではと強く思うのです。
ご飯のうまみは「ヌカ分」にあると言ったら言いすぎでしょうか?
歩留で言えば九十一から九十二くらいで仕上げ、表面の付着ヌカを綺麗にしてあげれば、炊いておいしいご飯になります。
日本は急げ急げで来ましたが、高齢化社会を迎え、ゆっくり、ゆっくり、スロー、スローが逆の意味で時代に合っています。
人間だって広い意味で云えば「飯を食う」ために生きているようなものですから・・・・・。
同じ人間が、時には五分で食事を済ませ、時には三時間かけて楽しむ。
定年からの残りの人生をいかに楽しむかということになれば、ゆっくりと食事を楽しむということも重要なことであろうとおもうのです。
米専門店は精米方法も色々提案し、真っ白いご飯だけが、おいしいご飯ではありませんよと、お客様とコミュニケーションをとることなどが重要です。
そういう意味では、あらかじめ袋詰された米では、そうは出来ませんし、お金とモノとの交換作業になってしまいますから、専門店で対面販売の意味がなくなってしまいます。
ご飯食を中心とした日本型食生活の良さを再認識できるように提案してゆくことがすごく大切なことだと思うのです。
又、日本食の優れたところは、発酵食品が多いことです。
漬物、味噌、醤油、酢など、これら発酵食品が健康に良いことは再認識されてきました。
米を中心とした食生活提案として、電気炊飯器の果たした役割は総理大臣賞ものですね。今ではIH方式もあり、炊飯ジャーとして、おひつの代わりにもなりました。
そんな時代だからこそ、ガス直火で簡単に炊ける「土鍋」を提案し、小さな「おひつ」も提案。
精米を甘くした米を、しっかりと研いで「ご飯用土鍋」で炊く。
ガスなら簡単に「火加減」できるし、お年寄りがいれば、ご飯を柔らかくするために「水加減」を多くしてあげる思いやりが家族の暖かさを作るのでしょう。
日本の「火加減」や「水加減」
よい加減を大事にしたいものです。

シニア会  市川 稔
minoru-ichikawa@irb.co.jp

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