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コラム「説く盛りどんぶり」 69杯目

部分と全体

アメリカで大規模なテロ事件が起き、世界経済は大減速か。日本の株価が日経平均一万円割れで大恐慌の助走か。失業率が五%突破し更に悪くなるか。マイカルの経営破綻で小売業界は一層厳しくなるか。
週刊誌や本のタイトルは「ギョッとする」ものでないと売れない。
常に全体を把握し、知っておかねばならないが、ほとんどの報道は真実を伝えていると思ったら、大間違いですよ。
テレビも一番「絵」になる映像を繰り返し流すので、何度も見ているとあたかもすべてそうなっているような錯覚を起こしてしまう。
冷静な目で見、判断しないと間違った決断、行動になりかねない。
心理的に不安要素を作り、注目を集めるのは常套手段であって、安易に乗らない方が良いでしょう。
人々や組織をまとめて行くときに有効な手段は「仮想敵」を作ることが一番まとまります。
アメリカでは表に現れない「テロ組織」を敵として国民が団結します。報復とかリンチは組織をまとめる為に有効な手段なのです。
人間の一番汚い部分を逆手に取っていることになります。
 さて、この部分と全体を

業界とわが社

に置き換えてみましょう。
よく話しにでるのは「ウチの業界はどうなってしまうのだろう・・。
と、いうものです。
業界の心配をするより、「あなたの会社、店の問題ですよ」と声を大にして言いたい。
ここのコラムは中小零細をイメージして書いていますので、大企業の人は対象外です。
前にも触れましたが、現在のキーワードは
「低価格適性品質」
「高価格高品質高安全性」
「高齢化社会」
「三世代消費」
「パラサイトシングル」
この中で一般的に大企業がめざすところは、低価格適性品質になります。なぜなら、一般大衆の大半を相手にしないとマーケットが小さいからです。

価格競争

外食の65円バーガーに端を発し、値下げラッシュです。
牛丼280円、ファミレスのランチ480円、ほか弁300円など、コンビニの弁当も400円台から300円台に移ってきています。
しかし、この大きな流れとは違う生き方もあるのです。
80パーセントのマーケットを狙う大企業はそうせざるを得ませんが、中小零細がその同じ土俵に入っては更に苦しくなるでしょう。
筆者がよく行くラーメン屋が東京町田にあります。いつも行列を
作り順番を待っています。
中小が生残り、勝ち残る良い例なので紹介したいと思います。
ここのラーメンは価格でいえば800円から1100円位します。しかも税別で。
お客さんは高いラーメンを食べに来ているのではなくて、「おいしいラーメン」を食べたいのです。
よく「値ごろ感」という言葉が出てきます。
筆者は、この値ごろ感とは買う側より、売る側で勝手に判断しているのでは、と思ってしまうのです。
ラーメン店は深夜営業しているところが多いですが、この店はスープが無くなり次第閉店しますので、夜は遅くとも八時、早い時は7時で閉店です。しかも毎週定休日を設け、月2回は連休もします。
牛丼のように価格を下げ、客数を1.5倍にして採算を取る戦術と
(現場は忙しいばかり。客数が予定に行かなければ益率確保の為材料を落とす=客離れ・・・という悪い循環にならねば良いが・・・。)
反対に価格に敏感なお客は来なくて結構、味のわかる上客を固定客としていく方法も立派に存在していることも知っておかねばなりません。
食品スーパーでは「ウチには価格に敏感な客しか来ない」と言いますが、毎週毎週チラシで何円の品を何円と。安いよと自ら訴えているわけで、価格に敏感になるのは当然でしょう。

米の世界に目を転じると

国内の米生産は40%に上る減反をしながら価格の下落に歯止めが掛からない。
関税化で国際価格の圧力も加わって来ます。土門剛さんによれば現在、米の関税kg当り351円がこれからの交渉で150円から200円位の攻防だそうだ。仮に150円とすると、中国の高品質米で日本の港着、約60円、流通費50円とすれば、合計260円となります。白米260円は玄米54kgで精米すると仮定すると、国産米では1俵約1万4千円程になります。
国内米価は一般米についてはこの当りがひとつの目処になるかも知れない。
大量に米を扱う場合、輸入米は完全に視野に入れなければならないし、よほどのことがない限り国際価格に近づいて行くことになるだろう。
米に限らず、中国は日本の台所、産地であると割り切らないと理解に苦しむことになる。筆者は賛成ではないが、現実はそうなっていく可能性が高いと言わざるを得ない。
国内農業は特別な物。だけしか生残りは難しくなるだろう。
高品質、高安全性、そして特別な販売方法でしか、高価格は通用しなくなっていくかも知れない。
しかし、確実にそういうお客さんもいることも事実なのです。

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