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コラム「説く盛りどんぶり」 44杯目

為替レートと日本人気質

いつも報道を見聞きして疑問に思うことがある。
円がドルに対して上がった下がったと一喜一憂している。
上がれば円高で大変だと騒ぎ、下がれば円安で大変だという。一体どちらが良いのだろうか。
円が高くなれば輸出企業は受け取る円が少なくなるので値下げあるいは値引きと同じ訳だから大変だという。
しかし日本企業は、それに見合った売上、利益を確保するために合理化を図りコスト削減に奔走する。そうして競争力を増し更に量的に売り攻勢をかける。そして又同じことが繰り返される羽目になっていく。
ある大学教授から面白い話しを聞いた。それは日本の企業がイタリアに進出し、ある製品の生産を開始した。当初は販売に苦労したが徐々に受け入れられフル生産となった。日本人スタッフは新工場を建設し増産しようとするが、イタリア人スタッフや得意先は絶対反対だという。理由はこんなに売れているのになぜ更に売ろうとするのかということです。日本人の感覚は更に増産しコストを下げ販売価格も下げて一気にシェアや売上を増やそうとする。
イタリア人スタッフは増産せずに値上げして売上を増やそうという。結局新工場は作らずに数年で20%の値上げができたとのことでありました。
そこで解ることは日本人に染みつた「品質の良いもの」を「安く」提供して売れていくのに何が悪いという考え方であります。
バイクに自動車、カメラやコピー機にファックス等世界で圧倒的なシェアを確保している製品群は沢山あります。しかし、その陰でそれぞれの国で産業が消滅していったものもあることを忘れてはいけません。
もうそろそろ安さから脱却して独創性や付加価値を求め量の拡大から質の向上へシフトするべきと思うのです。
(その証拠にブランド品に日本人は弱い。ルイヴィトンの日本での売上は全世界の三分の一を占め、国外で買う分を加えると半分を占めるそうだ。)
日本製の工業製品、特に自動車はものすごい競争力があります。何故かと言えば「故障しない」からです。日本製より価格が高いのはドイツ製と一部の英国、イタリア製位でしょう。日本国内で生産した車はもっと高く販売してもいいと思うのです。日本の輸出型企業に頑張ってほしいのは「ブランド化」です。
なぜなら、それら一部の競争力がある輸出企業のために一方で輸入品が安く入るため急増するからです。
今、中国から繊維製品の輸入が急増して問題になっています。
安い人件費の国で日本の品質管理システムと日本の自動化機械を導入すれば良い製品は出来るでしょう。それで日本国内の繊維産業は更に縮小していきます。今は国民の大多数が安くて良い物が買えればよいと思っているが、それにも限度があることを忘れてはなりません。
軽衣料ならまだよいですが食料品となると話しは変わってきます。
日本はご承知のように食糧自給率40%を切るお寒い状態であって、世界には飢えに苦しむ人が六億人もいると聞きます。
安いからという理由で輸入が増えていくことに疑問を感じます。
寿司に必要なガリもあっという間に中国産に。梅干も台湾から中国に。長ねぎまで・・・・。
米も日本の技術をもって中国の適地で生産すれば品質のよいおいしい米が獲れるでしょう。
まったくおめでたいことに日本から技術指導に行っているそうで、国賊のようなものです。
為替レートの適正を判断することは難しいですが、技術大国日本は規格大量生産品からそろそろ脱却する時期に来ているのではないでしょうか。
ある自動車部品メーカーの実話ですが、部品価格30%引き下げ要求を受け、ゼロになるより数量を増やしてもらい仕事を受けたほうが良いと判断し受けたそうです。そして今後三年で更に20%の引き下げ要求でなんと価格は約半分になってしまうそうです。
世界最適調達と称してコストダウンし、自動車メーカーは生き残りを賭けています。
ここで考えて見たいのは、そうして頑張って国民は幸せになるかということであります。
大企業はリストラ断行し合理化をすると株価は上がります。
従業員を減らし、給与を下げ待遇を悪くすると株価総額イコール企業価値が上がるという矛盾があります。

「価格決定権」とソフト

一般的に儲からなくなると捨て身の戦法で「値下げ」して「売り」に入るのです。儲からなくなって「値上げ」しようと考える会社は少ないと思います。
なぜかというと値下げは簡単に実行できますが、値上げはそう簡単に出来ないからであります。
値上げにはそれなりの理由が必要で、しかもお客様が買ってくれなければ成立しません。
その時はじめて知恵を使うのです。
値下げの時は知恵をあまり使いません。もう随分前ですが、前経済企画庁長官の堺屋太一先生が「知価革命」という本を出されました。
価格を構成する要素が素材とかより「知恵」などソフトにあることを訴えた内容でありました。日本ではネクタイ、ハンカチ、靴下などブランドオンパレードです。その付加価値分はブランド使用料として支払っているのです。
日本はソフト部分の貿易はアメリカに対してだけ見ても年間三千億円の支出超であります。
最近、日本でもベストセラーになった「金持ち父さん貧乏父さん」という面白い本がありますが、その中に出てくる「ラットレース」という表現があります、まさに日本人はねずみのように動き回り、長時間働くことが「善」とされていましたので、そう簡単には変わりませんが、自分あるいは自社の領域をしっかり探し、キチンとした目的を持たないと、「こんなに一所懸命働いたのに生活できないのはおかしい」と悪いのはすべて他人のせいにして愚痴と嘆きの人生になってしまいます。楽しみと喜びの人生にするのは考え方次第だと思うのです。

みのる

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